◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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今の会社、Canalsは大学三年の時に仲間十人で創業した。そのうちのひとり、代表取締役をやっている男、一ノ瀬夏哉がそれだ。  俺と一ノ瀬夏哉、ナツは中学からK大の付属に入り、そのまま大学と創業した現在の会社まで同じ時を過ごしている。 中学からラグビー部に所属し、高校三年、引退前の国体は一緒に出場した仲だ。 十五人というギリギリの人数で奇跡的に国体に出られた俺たちは、一回戦負けしたあと、腰のかなり下の方に全員でタトゥーを入れた。〝FORGA〟というなんかかっこいいだろ? 的なノリだけの意味のない綴りだ。 要は十五人だけに通じる暗号がよかった。絆として、世に流通していない単語がよかった。 若気の至りもいいところだが、腰の下の方に小さく入れたことで消さずに済んでいる。 FORGAのつながりは今でも強固だが、公私共に中坊の頃から現在に至るまで、一番近くにいて、一番親しい友達関係にあるのが、おそらくナツだ。 運動神経の塊のような人種で、ラグビー、ボクシング、テニスにヨットと、男臭いスポーツに熱中してきたナツだが、それに反してマスクは甘い路線のイケメン、高身長で筋肉質な割には、着痩せしてスタイリッシュに見えるタイプだった。 いわゆる細マッチョというやつだろう。 当然、中学時代から女によくモテた。 しかしやつは大学入学時までまともな恋愛をしてこなかった。
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