◇◇月城一颯◇◇ 相違

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Canalsの副社長、村上健司は人間的には最悪に決まっている。倫理観皆無のどうしようもない人種に違いない。そう思っていた。 それなのに、最初にダウンジャケットの取り違えがあってスタバで会った時、あまりに想像していた対応と違って、内心戸惑いまくっていたのが本音だ。 覚悟を決めてスタバに向かった。 でも、わたしがジャケットを取り違えたせいで、せっかくの休日に時間を割かれたというのに、責めるようなそぶりを見ないどころか、自宅近くまで呼んだ事を詫びて、コーヒーまでご馳走してくれた。 電報堂の名刺を持っているわたしに、下手な態度を取らないためなんだと思おうとした。 けれどわたしがAIに興味を持っていることや、デジタル分野にある程度精通していることを知った際の瞳は、子供が宝物を見つけた時のようにきらめいていた。 きわめつけが、わたしが転職を望んでいると知った時のセリフだ。 「もし、よかったら。いや、よくなくてもぜひ、ぜひ聞きたいです、どこか」 〝よくなくてもぜひ〟ってなんだよ? と吹き出しそうになった。 必死すぎだって。 あの時、わたしは自分の立ち位置を完全に忘れていたかもしれない。
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