◇◇月城一颯◇◇ 相違

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会社のために優秀なデジタル人材が欲しい、その気持ちがビリビリと伝わってくる。 村上健司はCanalsの副社長。わたしが、キャリア採用を狙っている会社の副社長の名前を知らないはずはないのに、そこには全く思い至らなかったようだ。 会話にさりげなくデジタルスキルを織り交ぜ、できる限りの自己アピールはしたつもりだ。 そして、思惑通りにCanalsに採用になり、デジタル統括本部に配属になった。 それからは、想像していた人物像との乖離はさらに大きくなっている。 村上健司は社員にこの上なく慕われている。普段から社員と非常に距離が近い副社長で、気安くなんでも伝えられる関係性を築いている事は、入社以来の観察で理解していた。 けれどこの間の歓迎ボーリング大会での部下たちとの接し方は、衝撃的と言ってもいいかもしれない。 若手社員が副社長の腕を引き、背中を押し、強引に三次会まで誘っている。いくら酔っての行為といえど、正直、唖然(あぜん)とするほど驚かされた。 まるで仲間を誘うような気やすさだった。そして村上健司は嫌な顔をしないどころか、嬉々として参加してしまう。 文字通り嬉しそうに……。
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