◇◇月城一颯◇◇ 相違

7/9
前へ
/263ページ
次へ
「じゃ最後に」 次のプロジェクトの大まかな概略を伝え終わるとスクリーンが切り替わった。 「ビジネスにおけるインパクトについてだ。常にこれを意識して仕事をしてほしい。自分も楽しく、相手も楽しい。仕事は総花的(そうばなてき)であるべきで、その目標に近づく一助となれば嬉しい」 「え……」  巨大スクリーン上の切り替わった画像に、わたしは思わず声を漏らしてしまったらしい。長テーブルに腰掛ける隣の女子社員がちらりとこっちに視線を向ける。  スクリーンには、山の上に、長く裾を引く衣服を(まと)った巨大な女性が立っている映像が、映し出されていた。 「白衣観音(びゃくいかんのん)、超巨大な観音像だ。子供の頃の家族旅行で、国道を車で走っている時に見た光景に仰天した。山の上に人が立っている。だけどサイズ感が明らかにおかしい。人間の形をしているけど人間じゃない! 恐怖にも似た好奇心が強烈に湧いたのを覚えている」  わたしはなぜだか急激に悪寒(おかん)に見舞われた。 「旅行後に小学校で友達に喋りまくったのを覚えている。どうだ、この映像。子供だったら触れ回りたいくらいのインパクトがあるだろ?」
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

306人が本棚に入れています
本棚に追加