◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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いや、奥手で誠実だったわけではなく、言ってみればその逆。 スポーツや男友達を優先するあまり、好みのタイプで、かつ男の欲望を簡単に満たせそうな、軽い女の子ばかりを彼女に選んでいた。 選んでいる女の子が女の子だから、彼女たちにしてみても、ナツはあとくされがなく都合がよかったのかもしれない。 お互い様、の相手しか選ばない。 その結果、大学入学時にやつの元カノは、両手の指では足りないという(はた)から見れば不誠実このうえない事態になってしまっていた。 結局、ナツにとっての初恋は、一通りの体験が済んでいた大学一年。そのことに自分で気づいていなかった。 そして運命の大学入学時、その女の子と出会ってからのナツの変化……成長は凄まじかった。 ナツはその子のためなら、何度でも迷う事なく命を投げ出すだろう。 親友を根幹から変えた大恋愛を目の前で見てきた俺は、どこかで、今の彼女に対する気持ちは、ナツの恋愛に叶わない、と比べてしまっていたのかもしれない。 俺はナツのようなチャラい中高時代を送ったわけではなく、恋愛にはいつも真剣だった。 だからそんな事は認めたくはない。
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