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家が一番遠いナツが深夜のオフィスに到着だ。こっちも家で着るようなへたったトレーナーにとりあえずのジーンズ姿だ。上着も着ていない。
「どういうことだ?」
「いや、調べてみないとなんとも。まさかこれが作動する日がくるなんて思わないだろ」
「ソフトの不具合じゃないんだよな?」
ナツが寒そうに両腕をさすりながら俺のパソコンを覗く。
このセキュリティソフトは、海外企業のオープンソースを使って独自のものに落とし込んだ。
人が勉強しまくり、苦労の末に作ったものに対して、忌憚のない突っ込みを入れられるのは長年の信頼関係あってのことだ。こんな時に遠慮していたら話も進まない。
飲め、って意味でまだ充分温かいデスクの上の俺のカップを、ナツの方に押し出す。
ナツはカップを両手で囲うようにして、肩を縮こまらせてコーヒーを啜る。そりゃ寒いだろう。
「淹れてくる?」
「いや、今のでもうあったまったよ。サンキューな。早く話聞きたい」
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