◇◇村上健司◇◇ 問題

9/30

306人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
家が一番遠いナツが深夜のオフィスに到着だ。こっちも家で着るようなへたったトレーナーにとりあえずのジーンズ姿だ。上着も着ていない。 「どういうことだ?」 「いや、調べてみないとなんとも。まさかこれが作動する日がくるなんて思わないだろ」 「ソフトの不具合じゃないんだよな?」  ナツが寒そうに両腕をさすりながら俺のパソコンを覗く。  このセキュリティソフトは、海外企業のオープンソースを使って独自のものに落とし込んだ。 人が勉強しまくり、苦労の末に作ったものに対して、忌憚(きたん)のない突っ込みを入れられるのは長年の信頼関係あってのことだ。こんな時に遠慮していたら話も進まない。  飲め、って意味でまだ充分温かいデスクの上の俺のカップを、ナツの方に押し出す。 ナツはカップを両手で囲うようにして、肩を縮こまらせてコーヒーを啜る。そりゃ寒いだろう。 「()れてくる?」 「いや、今のでもうあったまったよ。サンキューな。早く話聞きたい」
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

306人が本棚に入れています
本棚に追加