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俺は朝から、副社長室のデスク周り、引出しの中を不自然にならないように注意しながら確認している。
盗聴器が今のところ見つからない事が、苛立ちに拍車をかけている。
ガラス張りの上にこの部屋は、俺が退社する時以外は鍵をかけたりはしないのだ。
だけど、もちろん秘書である浅見さんの他には、俺の留守中に許可なく入ってくる人間なんていないだろうし、もしそんな事があればどこからでも見えてしまい、不審に思われるに違いない。
やっぱりいくらなんでも盗聴器なんて考え過ぎか……。
片肘をついて、空になった俺の使っているコーヒーカップの縁をコンコンと机に打ち付ける。ペットボトルや缶コーヒーよりも陶器のマイカップが落ち着く。
給湯室にもふわふわの泡が出るデロンギのコーヒーメーカーが置いてある。富士山の水も無料だけど、紙コップじゃなくてそこもマイカップだ。
そんなわけで俺以外にもマイカップを会社に置いている社員がほとんどだ。昭和時代のオフィスがそうだったらしいけど、一周回って今はエコの観点から我が社はマイカップ推奨。
もちろんいつもは一日一回程度しか飲まないから自分で洗う。でも今日は何度浅見さんに給湯室との往復をさせてしまったことやら……。
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