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俺のガラス張り案含め冨永がうまく形にしてくれた事で、ショート動画で近代的オフィスとしてバズった。実際使う社員の評判も悪くない。
俺はコーヒーメーカーのカフェラテを淹れるとそれを手に、反対側の密林バージョンの休憩室でぼーっとすることもある。
白い椅子に座って、緑の木々の上を流れ落ちていく水を見ていると、落ち着くのだ。壁に這わせた蔦の上に透明ガラスを被せたアクアウォールだ。
実際、男女に関わらず、こっちで休憩している人間が多いと思う。
でも今日、俺はここに休憩をしにきたわけじゃない。ここだけがガラス張りじゃないからだ。
デロンギの方の休憩室には誰もいなかった。
俺はシンクの前で、陶器のマイカップの底部分を目で、それから指で、丹念に、だけど触れるだけのようにしてそっと確認する。
ごつごつ、ざらざらしていてわかりづらいが、均等に凹んだ底部分の、一箇所が明らかに盛り上がっている。
底なんかふだん手で触らないけど、以前この盛り上がりがあったようには思えない。質感からしても、最近のもののように感じる。
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