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たぶんこれだなー、盗聴器。
シンクの引き出しからフォークを出してこじ開ければ確実だけど、その音まで盗聴器は拾ってしまうだろう。
それでは相手に、こっちが盗聴器に気づいたと教えているようなものだ。だから決定打にはなり得ようがない。
でもこれが盗聴器の可能性は限りなく高い。
もしそうだとすれば、俺がナツと枝川を呼び出したあの夜に三人でした会話を、盗聴器は拾ってくれているはずだ。
片付けてから退社するのが常だけど、暖房の止まったオフィスは寒くて、俺と枝川はコーヒーを淹れに行った。確かにカップは俺たちの近くにあった。
これから、もしかしたら業務外の余分なミッションが長丁場になるかもしれないな、と覚悟を決める。
「なんかーー」
わくわくするかも、的な独り言が漏れそうになり、あぶねえあぶねえ、とカップに視線を落として口をつぐんだ。
心情は複雑極まりなく、やらなくてはならない事は面倒なはずなのに、気持ちが異様に高揚してもいる。
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