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亜星のことを思い出しながら、楓と凪と次にライブで披露する曲を合わせ終わった。
なんだ、この感じ。音楽というより、すごい何かを表現したようなこの感じ。
俺の心は達成感に満ち溢れた。
俺たちの求めていた音の世界の完成系が、これだったように思えたからだ。
楓は俺よりも雰囲気を作るのが上手く、曲の分析ができる。
凪は、曲を細部まで感じとって、その曲の表情を自然に表すことができる。
〝そうだな〜?走っていく時の感じは、音ではちょっとずつ大きく跳ねて、歌ではためらいを感じるように演技して歌おう。雪人、行けそう?〟
亜星が言っていたことが、わかっていく。
ふと凪を見ると、彼女はなぜか泣いていた。
「え、ど、どうした⁉︎ 」
「いや」
俺は居ても立っても居られず、楓と顔を見合わせた。
「この曲を合わせられるのが、嬉しくて」
「………」
「自分は、当時、あなたたちの曲を聴いて生きる希望をもらえました」
〝人の心を動かせるような曲を作りたいんだ〟
亜星の言葉がこだまして、俺の胸は熱くなった。
「自分は、まだまだ雰囲気を考えた分析とかはできないですけど、この曲がすごい曲だってことはわかるんです。自分、こんな格好してるし、わけわからないやつですが、これからも、あなたたちの曲に協力させてください」
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