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出動青蛇軍団
――――旧鼠、とは。日本では妖怪の名。頭黒たちもいる以上、この和風異世界には妖怪が普通に暮らしているらしい。
しかし旧鼠とは……確か猫又でも勝つのが難しい妖怪ではなかったか。
しかしまさかの有名な鼠ハンター蛇妖怪ズにとっては浮き足立つ獲物らしい。
そうして、頭黒の召集で集まってくれたのは、都でひっそりと息を潜めていたと言うアオダイショウの妖怪たち。みんなヒト型を取っており、上半身がヒト型で下半身が蛇である。
「シマヘビは山でも暮らせる。けどアオダイショウは人間の側がスキ」
あるアオダイショウは語る。
「でも旧鼠の策略でアオダイショウたち、宮中を追い出されてしまった。今までは気付かれないように庶民の家に隠れてた」
そうかそうか、追い出されたけども、また戻ってきてくれるなんて、めちゃくちゃイイコたちじゃないか、アオダイショウたち。
「頭黒は旧鼠たちが市井に目を向けないよう、山で威嚇してた」
あぁ、だから頭黒は山にいたわけね。
「うむ。旧鼠たちも蛇を追い払いたかったから我に邪悪な黒蛇とあだ名を付けて人間たちの目を向けさせたからちょうど良かったのだ」
そう頭黒も頷く。旧鼠の作戦をうまく使ったのか。
「あれ……でも、旧鼠退治ができる蛇たちが何で追い払われてしまったんだ?」
「白蛇の巫子と離れていた際に、陰陽師が誤って封じてしまったのだ」
うん……?白蛇にも巫子がいるのか。つか、陰陽師が間違って封印って笑えない。
「多分それも、旧鼠の策略。く……っ」
アオダイショウも悔しそうである。
しかし陰陽師まで手玉に取るとは、相当厄介な相手なのだろうか。
「でも、間違って封じられたら……白蛇さまはめちゃくちゃ怒ってるんじゃぁ……」
「うむ……恐らく山ひとつ鎮めるくらいには」
規模がやべぇっ!!
「けど、我らの旗印、目覚めさせるのだ!それに伊月の巫子の力があれば完璧だ」
「あー……そうなの?でもいいのかなぁ……大丈夫?」
「ほら、これ」
頭黒が大きな岩を示す。そして白いしめ縄のようなものを俺に持たせて……。
「……って、頭黒!これ絶対ヤバいやつぅ――――っ!」
ブチッ
あ……。ツッコんだ弾みで……しめ縄のブッち切っちゃったぁ~~っ!!?
「ちょ……どおしよおおぉっ!これえええぇっ!!?」
「あ、目覚める」
頭黒は平然と告げ、アオダイショウたちも拍手してくるけど、本当に大丈夫か、コレ!
しかしその瞬間、岩に激しい落雷が落ち、よろけて頭黒の胸元に倒れ込む。
「あぅ……っ」
「いきなり抱き付いてくれるのか、伊月。我嬉しい」
やっぱり感覚ずれてるううぅっ!これが人間と妖怪の考え方の違いってやつ!?何かびっみょーにずれてる気もするけど……次の瞬間。
岩が割れ、その中から白髪赤い瞳の上半身人間、下半身白い蛇体の美しい青年が現れた。
「おんどりゃあぁぁぁっ!人間めええええぇっ!!!」
ひぃーっ!?怨んでる怨んでる!人間怨んでるううぅっ!!!
「祟ってやろうか子々孫々――――っ!!」
つーか、それ一番ヤバいやつぅ――――っ!
「はぁー……スッキリした」
しかし次の瞬間白蛇さまは目を閉じ静かに息を漏らす。え……?収まった……?
「さて、取り敢えずどこの山から吹き飛ばす」
いや、全く収まってなかった――――っ!
「白蛇、我らこれから旧鼠捕り行く。来るか?」
いや、白蛇さま山の話してるのに話聞いてるのかな、頭黒!?マイペースすぎないか!?
「あー……俺を封じた陰陽師唆したネズミ?何……?まだ巣くってんの……?いいぜ……目にもん見せたらぁ――――っ!」
あ、でも上手く恨みがシフトチェンジしたらしい。
「よぉし、お前らしゅつげ……」
その時、白蛇さまが俺に気が付く。
「その人間誰?」
「我の嫁。出会った瞬間運命と分かった。絶賛イチャイチャ中」
まぁ俺、頭黒に抱き付いたままになってるけど。
「リア充爆破ぁ――――――っ!!」
ギャ――――っ!?地雷踏み抜いた――――っ!
「我幸せの絶頂っ!」
「こら頭黒ぉっ!余計なこと言わないの!メッ!!」
しかし時は遅く……。
「リア充爆破してやるううぅっ!お前ら出動すんぞぉーっ!」
いや、白蛇さま!目的変わってるうううぅっ!
でも出動する最中、俺はあることに気が付いた。
「白蛇さま、蝮じゃない……?」
いわゆるニホンマムシと呼ばれる毒蛇のアルビノの蛇体に見えるんだが。
ーーー
追記:時系列おかしな部分を修正しました
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