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後始末
――――宮中に蔓延っていた旧鼠は退治され、残りはアオダイショウたちと武官が徹底的に鼠退治をしてくれた。
旧鼠がいなくなると、みんな洗脳が解けていたかのように、何故益蛇のアオダイショウを外に追いやってしまったのだと頭を抱えていた。
うん、この世界でもちゃんと蛇はありがたいものだと思われていたらしい。
そして中宮さまが惑わされていなかったのは白蛇さま……鴇白さまの巫子なのだと聞かされて、それが影響していたのだと思う。
何せ春宮は旧鼠が去っても蛇を恐れたので。
なお、春宮は今回の一件でも春宮に相応しくないと判断されて、その位を解かれてひとり出家させられたらしい。
一方で旧鼠に唆されて宮中に招き入れた皇子は処刑され、その母親の女御も責任を捕らされ尼僧寺に出家させられた。
なお、鴇白さまを封印した陰陽師も皇子が旧鼠に使われ唆したらしく、宮中に未曾有の危機をもたらしたとして処罰された。
そして今までは春宮が恐れるからと仕方がなく鴇白さまは中宮さまから離れたところに待機していたのだが、鴇白さまが離れたことで宮中が狙われたことと、春宮が代替わりしたことで今は再び側にいられるようになった。
一方で俺はと言うと。
「あぁ……宮中っていいね。この世界は男しかいないから腐り放題」
「腐る……とは何だ?納豆か」
傍らに蛇体を自由にしながら、こてんと首を傾げる旦那さまがやはりかわいい。
「納豆は発酵しているんだよ」
頭黒は妖怪だから、人間のご飯も食べれる。納豆は苦手なのかなと思えば、やはり和風産。めちゃくちゃ気に入っている。
「なぬ……っ」
このびっくりようもかわいいなぁ。
あと、蛇妖怪たちは再び宮中や都を堂々と行き来できるようになったので、宮中を歩けば日向ぼっこしているアオダイショウたちに出会える。もちろん鼠が入ったら退治してくれる優秀なハンターだ。
宮中はすっかり鼠が湧かなくなって過ごしやすい。
「あれ……そう言えば中宮さまは鴇白さまの巫子だけど、俺は誰の巫子なのかな……?」
この世界の……神さま……?でも実際は日本の神社のように社ごとに神さまが祀られているらしい。鴇白さまの社もあると聞いたが。
「我だ」
「え……?頭黒は神さまでは……」
「我がいた山に社を持っている。白蛇と隣同士」
まさかの鴇白さまの社もあそこにあったんかいっ!
「いや、初耳。てか、それなら俺は頭黒が呼んだの?」
「ううん。呼ばれた巫子は、神の伴侶となって初めてその神の巫子となる。その子孫と適格者があれば巫子となるが、伴侶となるかは神の自由。白蛇たちのように受け同士ならば選ぶだけでなっていないだろう?」
――――と、言うことは鴇白さまの最初の伴侶も日本人かもしれないってことか……?
新たな事実を知ってしまった。
そして俺は頭黒に選ばれて、頭黒の巫子兼伴侶になったのだ。
てか……鴇白さま……受けか。
考え耽っていれば不意に声がかかる。
「おや……そなたはまた物語を書いていたのか?」
ふと、中宮さまと鴇白さまが帝への謁見から戻って来られた。
「はい!だってもう、萌えの宝庫ですから」
こちらの文字は覚えるのが難しかったが、妄想のためとならばお手の物。今では物語だけではなく、仕事にも活かせるようになってきた。
今俺は、中宮さまに仕える女房を果たしている。女房と言っても……全員男、受け男子である。
頭黒は攻めだが、妖怪だし俺の伴侶だからと言うことで、同じくここに入る許可がでたので、俺にベタベタくっつきながらゴロゴロしている。
そして中宮さまは時折俺の書きためた物語を読んでくれる。読み書きの採点……と言うのは多分建前。上手くなった今でも読んでくれているんだもの。
「若いってのはいいな」
そう呟きつつも、鴇白さまも憧れるのだろうか。俺の物語よく読んでるし。
「でもリア充は爆破しろと思う」
やっぱそれは変わってないのか。
けどそんな鴇白さまの言葉に穏やかな微笑みが溢れるのは……平和なだなぁと思うのだ。
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