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そんなある日。
母から、伯母が倒れたと連絡を受けた。
病院に行くと元気そうな伯母がいて、少し安心した。
「莉央ちゃんは、もう47歳なんだって」
「はい」
「もう、そんなになるんだね」
「ですね……」
「子なしって大変でしょ?」
「えっ?」
「一軒家に住んでるって、お母さんに聞いたから」
「そうなんです。近所付き合いがうまくいかないっていうか……。子供いないから話が長いとか煙たがられてるんじゃないかって……」
「わかる、わかる。私もそうだったから……」
伯母は、ニコニコと微笑みながら頷いた。
初めて、不安な気持ちが溶けてくのがわかる。
「だからね、莉央ちゃん達が来てくれた日はとびっきりお喋りになってたわ。久しぶりに誰かに自分の本音や思いをぶつけられるのが嬉しくてね。迷惑だったでしょ?」
「いえ……」
「でもね、パートで働いても子供がいなくていいわよねーー。何て言われちゃうもんだから……。すぐにパートをやめちゃってたの。習い事始めても、子供が待ってるからってみんないなくなってくし……。そんな日々の中で、莉央ちゃん達家族と話す時間だけが楽しかった。でも、莉央ちゃんは退屈だったわよね」
「いえ……」
「夫が出してきたピザが冷めてくの見ながら、あーー、早く終わらせなきゃって思うんだけどね。話した後で、こう言わなきゃよかった。とかああ言わなきゃよかったって思わないから。どんどん言葉が溢れて言っちゃうのよ。それで、食べる時にはチーズは冷めてカチカチで。あのチーズを頬張るとビヨーンとのびるでしょ?私は、あのチーズみたいに話がいつも長くなったのよね。だけど、莉央ちゃんのお母さんは美味しいって食べてくれてたでしょ。あの頃の私は、それにすごく救われたんだ」
伯母の言葉があの頃と違って、初めてわかった。
チーズが冷めてしまうほど、母や私達に話すをするのが楽しい気持ち。
話した後に、反省する気持ち。
私もいつか見つかるだろうか?
夫以外に……。
チーズが冷めてしまうほど、楽しく話せる人が……。
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