冷めたチーズ

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
母の姉である伯母は、結婚はしているけれど、子宝に恵まれなかった。 そのお陰で、小さな頃から私は伯母に可愛がられていて……。 そのお返しに、母が伯母の誕生日を毎年家族全員を連れて祝いに行くようになったのだ。 私は、誕生日の伯母の家が大好きだった。 お金持ちであろう、伯母夫婦の家のふかふかしたソファーに座れるから……。 猫の【ビジュ】に会えるから。 それよりも、私が行きたがった理由は、伯母の旦那さんが、庭で焼いて持ってくるピザだった。 おじさんは、私達が到着するとすぐに庭に行き、庭に組み立てられた本格的なピザ釜でピザを焼き始めるのだ。 おじさんは、学生の頃イタリアンレストランで働いていてシェフが焼いている姿に憧れてシェフを目指そうとしていたらしい。 しかし、両親から猛反対を受け……。 仕方なく、大手企業に就職したという。 まあ、そのお陰で歳を重ねる事につれ収入が増えてピザ釜を置ける庭にまで住めたんだけどとおじさんは、いつも笑って話すのだ。 そしたら、伯母さんはおじさんがいなくなると……。 「あーー、やって皮肉を言うから嫌いなのよ」 と苦笑いを浮かべ……。 両親は、愛想笑いを浮かべるのだ。 子供ながらに、このお喋りは苦手だった。 だけど、そこにおじさんが熱々のピザを持ってきてやってくれるから、私はトロトロにとろけたチーズを伸ばしながら頬張りたくてうずうずするのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!