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「それでね、最近はご近所さん達も孫が出来てね。話す機会が急に減っちゃったでしょ。だから、こうやって、三人が来てくれる事は嬉しいのよ」
「やっぱり、子供がいなかったら辛い事もあるの?私には、莉央がいるからわからなくて……」
「今だから言えるのは、あるわね」
あーー、始まってしまった。
この話しになるとピザが冷え、チーズが、カチカチになるまで終わらない。
熱々のピザに手を伸ばそうものなら、すかさず父が私の手の甲をパチンと叩くのだ。
せっかくの美味しそうな焼きたてピザに私の唾は、口の中に溢れてくる。
犬のように涎を垂らさないように、ゴクン、ゴクンと唾を上手に飲み込んで「うん、うん」と相槌を打つ。
これさえなければ、嬉しいのに……。
二枚目からは、熱々のピザが食べれるのだけれど……。
二枚目のピザは、一枚目より心待ちにしていないせいか熱々を頬張れても「こんなもんか」という気持ちになる。
たいして期待をしていないのが、自分でもわかる。
同級生の奈美ちゃんが、「お姉ちゃんばっかりお母さんは期待しているのに、私はほったらかしなの」とよく言っていたけれど……。
私は、この一枚目のピザを見る度に奈美ちゃんのお母さんの気持ちがよくわかるのだ。
ピザと一緒にしてはいけない事は、わかっている。
でも、一人目ほど期待しないのではないだろうかと思ってしまう。
あーー、こんなもんかって気持ちなのだろう。
逆に、私の両親は一人っ子である私にも期待をしていない。
それがいつもわかるのは、帰りの車の中だ。
「いつも、あのピザには感動するわね。本当に、美味しくて」
「冷めたのもうまいけど、とろけたチーズも悪くないよな」
「そうそう。両方いけるのよねーー」
つまり、両親は冷めたチーズも好きなのだ。
何というか、この二人は何かに異常に期待しないのがわかる。
ピザはピザ美味しいものだという認識だろうか?
そう、認識の違いだ。
だから、私は何にも期待されなかった。
もちろん、子供ができなかった事も……。
母と父は、「ああ、そうか」としか言わなかったのだ。
もう何が言いたいかわからなくなってきてしまった。
そうだった。
話を戻すと私は、近所に10歳の私のように思われているのだ。
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