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すると どういうことだろう なぜかこのお店、恋人しかいない。 右を見ても左を見てもお一人様がいない。必ず男女がペアで買い物をしている。家族づれもお父さんとお母さんに子どもの組み合わせで、基本 比率は男女1対1。 なんだここは?日本なの? どこかの休日のデートスポットにでも紛れ込んだのだろうか。疑問は尽きないが、1人で入ったからと言って特に注意もされなかった。誰かに変な目で見られるわけでもない。 けれどなんだか 居心地が悪くて好美は早々に店を出た。 休日だから 家族連れが多いのは当然で、カップルが買い物するのも当たり前なのだと自分に言い聞かせてみるが、道を歩く人を見て違和感を覚える。 ここでも、手をつないで歩く男女ばかり。若いカップル以外にもお年寄りも、犬の散歩の中年の方も、小さな幼児でさえ、例外ではない。皆の幸せそうな笑顔に息苦しさを感じる。 なんだかおかしい。好美は足早に恋が丘ヒルズへの道を急ぐ。 信号の上の地名は「恋野原」 歯医者の名前は 「愛川歯科」 飲食店の名前は 「恋塚コーヒー」 目の前の薬局は 「愛田薬局」 次々に並ぶ 恋愛の文字に恐れをなす。 極めつけは小高い丘から街を見下ろす 「恋ヶ丘セントラル・ウェディング」 恋人がいないと住んではならない街ではなのか。車のクラクションに驚いて道を開ける。しかし突然、好美は警察官に呼び止められた。嫌な予感がする。冷たい汗が額から吹き出し、こめかみを伝う 。
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