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警察官の問いに好美は心の中で答える。
イイエ、ワタシハ、ヒトリデス
乾き切った喉から必死に声を絞り出し
「べ、別に困ってません。
寂しくもありません。迷惑もかけてません。
ほっといてください 。
まだ、そのタイミングじゃないんです!」
声にならず好美は逃げ出すように走り出した。
そんなに責めないで。一人の何が悪いのよ?
「待って!!」
警察官の静止を振り切り 好美は、全力で走り 公園の遊具の陰に隠れる。家はすぐそこだ 。見つかってはならない。慌てた拍子に、買ったお菓子の袋を全部落としてしまったが、警察官が追ってこないとわかると安心して、体の力が抜けた。その場でへたり込むが、頭は妙に冴えている。
早く「恋が丘」から逃げなければ。
周りを確認しながら公園を出ると
「好美〜」
と名前を呼ばれて声をかけられた。慌てて振り向くと 友人2人が大きな買い物袋を抱えてこちらに向かって手を振っている。
「来たらダメだよ。逃げよう!」
友人たちの手を取って走ろうとすると、彼女らは驚いたように好美を引き止める。
「どうしたの?」
事情を話したが理解はされない。
「追いかけられてる って?ストーカーに?」
どうすればいい、 時間がない。
二の足を踏んでいると、ついに警察官に見つかった。
終わった。もう逃げ切れない。
好美は動くこともできず恐怖で目をつぶる。
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