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恋
変わりたい。
私だってその気になれば多分できる
好美は思い切って引っ越しをした。
大学を卒業して将来やりたいことも 特になかったが、運良く内定をもらった会社に入り、はや2年の月日が経つ。実家暮らしだったが通勤で、満員電車を乗り継ぐ日々にも疲れが溜まっていた。この際一人暮らしをしてみようかと決心して意気ごんだ。
親からは意外にも奨励された。勢いに乗ってネットで物件を調べていくと、会社から10分程の距離で「恋ヶ丘ヒルズ」のアパート情報が目に止まる。2年前なら間違いなく
誰が住むんだ、こんな名のアパート。
恋人もいないのに。
と白い目で見ていたはずだ。
恋愛には疎く、付き合った経験はないのだから仕方ない。人には言えず、「恋愛は面倒くさいからしない」と適当にごまかしていたのに、最近周りが急に色めき立って仲のいい友達にも彼氏ができ始めた。結果、週末は外出せずに一人で過ごす。
会社でも同期の彼氏持ちの話題に花が咲く。肩身の狭い思いをしている好美にとって「恋」は重要な意味を持つようになってきた。正直なところ、ネットや漫画のように大人になったら恋愛ができると思っていた。まだその時期が来ていないだけだと勝手に思い込んでいたが、生身の男と出会って恋に落ちるなど、全くもって正気ではできない。
人の話を聞いて初めてわかる。
恋愛は努力と忍耐力が試される極めて困難を伴う作業だと理解する。
しかし 年月は人を変える。恋愛初心者だと周りに気取られるのは恥ずかしいので、小さな一歩を歩もうと環境から変えることにした。
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