葉山君

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 短い発音と音程に圧縮された情報やニュアンスをかなり正確に伝えることが出来ている。こういう会話が出始めた頃学者は『鳥の囀りの様だ』と称したとか。  情報化社会の発達に伴う発声器官や言語野の進化の結果らしい。人によってはイルカはもちろん鳥や犬とも意思疎通ができるとか。  もちろん文字媒体も消えた訳では無い。記録する必要がある物や注意書きなどには『言葉』を使う。しかしもっと早くもっと正確に情報を伝えられる『歌』の方がずっと便利で手軽だから音声データの方が好まれる例もある。  でも人類全員がそうである訳では無い。様々な理由から発達障害が出て『歌』が歌えない、理解できない人が生まれて来る。彼らは軽度の障害者に扱われている。  葉山君もその一人だ。  彼は『歌』が理解できない、『歌』を歌えもしない。高速言語を獲得する前の人類なんだ。  そういう人の受け皿ももちろんあって、私の学校でも積極的に生徒に迎えていて授業でも『言葉』を併用している。
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