葉山君

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 転校してきた葉山君は私の隣の席になった。物静かだけど感情豊かでとても真面目だった。  隣の席になった都合、私は彼にこの学校のあれこれを国語の時間位しか使わない『言葉』を使って色々教えた。それはなんだか自分でもぎこちなくて、昔の人は外国の人と話す時こんな感じだったのかと思う様な歯がゆさを感じるものだったけど、彼は私が何を言おうとしているのか汲み取ろうと、何というか顔だけじゃなくて体全体で聞く様な姿勢をいつも見せていた。傾聴って言うんだろうか。あまりに真剣に聞こうとするものだから場を和ませようと言った冗談でさえその聞き方で聞いて、そして聞いた後でくにゃりと表情を変えて笑う位だった。  言う時もそう、一つの事を言うのに話し方や言葉を変えて三回くらい言うのがデフォだ。多分普段私が使わない『言葉』での会話で少しでも伝わり易くしようとしているのだと思う。  ただ、比喩?と言うのだろうか、彼が使うそれらが私にはわからなくて逆にストレートに言って欲しいと思う事も多かった。  『花の様に笑う』とかってなんだろう。花は笑わない。笑ったって花弁なんて生えない。『歌』がいかに優れた言語なのかがそういう時よく分かる。
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