先生に会いたい

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先生に会いたい

琴音は数日間、昏睡状態であったが、奇跡的に回復した。 「お姉ちゃん、先生に許可をもらって、お姉ちゃんと散歩してもいいって言われたの」 「一度、お姉ちゃんと星を見ながら散歩したいなって思っていて、いいかな?」 「うん、いいわよ。行きましょう」 「うん」 満天の星の下で 「お姉ちゃん、私は先生のことが好きよ。お姉ちゃんもそうでしょ」 「そうよ……」 「先生はお姉ちゃんのことが好き」 「前からそうじゃないかなって思って不安だった」 「私はね、私の分までお姉ちゃんは先生と一緒になって幸せになってほしいの」 「だから、先生とお別れするって言わないで」 「琴音……」 「いいの。私はもう長くないし、少しだけ先生のそばにいられたらいいな」 「そのくらいはいいでしょ。お姉ちゃん」 「もちろんよ」 「明日、先生は忙しいかな?」 「私が聞いてみるね。」 「うん。できたら、もう一度だけレッスンをしてほしいな」 「琴音、ごめんね。私だけが幸せになるのかな……」 「どうして、謝るの?私達は姉妹でしょ」 「仲のいい姉妹でしょ」 「私も幸せよ。川崎先生を好きだっただけで幸せだった」 「琴音……」 「お姉ちゃん、私の分まで幸せになってね」 「私は星になるの。星になってお姉さんと先生との幸せを見守るから」 「お姉ちゃんの幸せを見届けるからね」 「琴音……」 「お姉ちゃん、泣かないで……」 「先生はお姉ちゃんの優しく笑った顔が好きなのよ」 「先生と笑顔で過ごしてね。そろそろ眠くなったから。帰ろう。」 「うん、わかった。琴音……」 琴音は翌日に退院となった。病院から許可がおりたのだった。 琴音のオルガンのある部屋で渡辺と二人きりで過ごすことに。 「先生、ごめんなさい。別れの曲は弾けなかったの」 「あれだけ練習したのにね。先生に褒められるかなと思って。」 「いいんだよ、琴音ちゃん。」 「琴音は頑張る子だったけど弾けなかった」 「でも、途中で練習するのをやめたの」 「先生とお別れするみたいな気がして」 「ごめんなさい、最後まで弾くことができなくて」 「先生は頑張る子が好きだったのに・・・」 「もういいんだよ、頑張らなくても……」 「それ以上、頑張らなくていいんだよ。琴音ちゃん。」 「先生、泣いているの?」 「泣いたら、琴音も涙がでてきそうでしょ。先生も何か喋って。」 「琴音ちゃんは充分頑張ってきたよ……琴音ちゃん、頭は痛くないの。」 「全然、痛くないの。いつもは痛いのだけど……不思議ね。」 「先生、前にアヴェ・マリアを弾きたいって言ったでしょ」 「あれから、一生懸命に練習したのよ」 「前はね、上手く弾けたけど、今は腕が良く動かないの」 「そうだ、先生が合わせて弾いてみて」 「それじゃ、先生が左手で弾いてみるからね。」 「先生、先生の膝の上に乗ってもいい?」 「もう、琴音は軽いから大丈夫よ」 「先生はぽっちゃりしている子が好きだっていったのに……」 「琴音はもうそうではないの……」 「いいんだよ……琴音ちゃん……充分、可愛らしいよ。」 「本当?先生。」 「ああ、もちろんだよ。じゃあ一緒に弾こうね。」 「はい。先生。」 川崎先生…… とても幸せです だからかな なんだか眠くなってきたの 先生がなんだか、少しずつ遠くに見えていきます。 「琴音ちゃん・・・」 先生、先生 先生・・・ ほら お空の上に先生が見えるのよ 優しい先生の笑顔が見えるのよ・・・ 先生と出会えて幸せでした。 END どうしたの さっきから、独り言を言って ええ 聞いていたのですか ああ 鳥のさえずりが聞こえてね どのような、さえずりでしたか 君みたいな、可愛らしいさえずりかな 私を鳥だと思っていらっしゃたのですか 君も可愛いね じゃあ、私が鳥なら 肩の上にとまっていいですか そこからなら、夕日がもっときれいに見えます じゃあ、ほら 僕の肩にのせるよ 駄目です どうして 恥ずかしいですし 私は重いですよ だって、君が僕の肩にとまりたいと言っただろ…… じゃあ、今度は、先生の肩の上にとまりますね 先生 本当に、夕日がとてもきれいに見えます 先生、ありがとう
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