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真実
「どうしたのですか? マエストロ?」
「君を一番愛しているのは誰だと思う」
「ミレーゼかね? それとも水江さんか?」
「どうして、水江さんのことを知っているのですか?」
「それはいい。君のことを最も愛しているのは私だ」
「そんな、マエストロ……」
「今、なんて、おっしゃいましたか?」
「もう一度言う、君を愛しているのは私だよ」
「ほら」
マエストロは男装をしていた。
「そうよ。私は女性よ。本当の名前はローラというの」
「雄二を一目見てから、夢中になったの」
「私は普段は髭をのばして男装をしているからわからなかったでしょ」
「マエストロ、そんな……」
「もう、マエストロと呼ばないで。ローラと呼んで」
「でも、どうして、水江さんのことを知っているのですか?」
「それは言えないわ」
「教えてください。マエストロ」
「それはあなた次第よ」
渡辺は驚愕し、自宅へ帰っていった。
一方で、水江の方は
渡辺さん、どうか助けてください
でも、不思議なのです。渡辺さんの優しい香りがどこかからします
気のせいでしょうか?
渡辺さん。渡辺さん
水江をお世話していた。竹下はどうやら主人に会って話をしていたようだ。
「いつまで、彼女を閉じ込めておくのですか?」
「それは私のことを愛してくれる時までだよ」
「マエストロは私のことを愛してくれているとおっしゃたじゃないですか」
「ああ、あれはあの時だけだ」
「今は水江ともう一人愛しているものがいる」
「そんな、私を裏切るつもりですか……?」
「ああ、すまない。もともと君のことには興味がなかったんだ」
「それじゃ、私を利用していただけですか?」
「そうだ。竹下」
「そんな……」
竹下は呆然としていた。マエストロはどこかに向かったようだ。
渡辺さん、助けて……
まただ、どうして、水江さんの声が聞こえるんだ
コン コン
渡辺の元にある男性がやってきた。
「あなたはどちら様でしょうか?」
「私はこの家の主人に仕える竹下というものです」
「どうされたのですか? 突然に……」
「今から、この屋敷から逃げてください」
「どういうことでしょうか? 竹下さん」
「渡辺さんが今いる、部屋の真下の部屋に水江さんは監禁されています」
「どうして……? 」
「事情は言えません。すぐにこの鍵で助け出して、逃げてください。すぐにです」
「わかりました」
渡辺は下の部屋へすぐさま向かった。
「水江さん……」
「どうして、渡辺さんがここに……?」
「マエストロ、竹下はあなたのことを愛していました。裏切られた今、私は……、私は……」
竹下は屋敷に火を放った
「マエストロ、愛していました。マエストロの想いでとともに私はここで……」
「竹下……」
「マエストロ……どうしてここへ」
「君を一人だけ死なせるわけにはいかない」
「マエストロは……?」
「本当は君を一番愛していた。私は美しいものは全て愛なのだ。竹下だけ死なすわけにはいかない」
「マエストロ……」
「竹下……」
ボオオ ガラガラガラ ガタガタ
「水江さん、急いで逃げましょう。火に巻き込まれないうちに」
「はい」
渡辺と水江はなんとか、屋敷を脱出して、急いで日本へと向かった。
「渡辺さん、会いたかったです」
「僕もだよ」
「しかし、あれは何だったのだ……」
「怖かっただろう」
「はい、怖かったです。でも、渡辺さんと再会できるとは思っていませんでした」
「もう離さない」
「でも、ミレーゼさんが……」
「彼女とは……」
「どうされたのですか?」
「僕たちを二人きりにさせてくれたのだよ」
屋敷は炎にまかれ、マエストロは竹下とともに散っていった。
渡辺と水江の新たなスタートを同時に迎えたのだった。
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