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想い
そして、渡辺と水江は日本に帰国することになった。
水江は今までのいきさつを話した。
そして、渡辺は手紙は誤解であることを伝え自らの水江への想いを伝えた。
ようやく、二人は結ばれることになったのだ。
驚いたのは桑山家だった。
特に琴音は驚きを隠せなかった。
「お姉ちゃん、今まで、どうしていたの?」
「それはね……」
水江は今までのいきさつを話した。
「そう、良かった。お姉ちゃん」
「うん、ありがとう、琴音」
しかし、水江と琴音には残された問題があった。
それは、渡辺のことだった。
「川崎先生、お姉ちゃんから聞きましたけど、ミレーゼさんとは別れたのですね?」
「ああ、そうだよ」
「それじゃ……」
「ううん、恥ずかしくて言えない」
渡辺は水江から琴音の気持ちは聞いていたので、何を言わんとするか容易に理解できた。しかし、なんと返してあげればいいのか困惑していた。
琴音は自らと両想いだと思い違いしていたからだ。
渡辺は悩み苦しんだ。
自らが愛しているのは水江であって、琴音は妹のような存在であったからだ。
しかし、琴音も恥ずかしくて、両想いであると勘違いしていても交際を求める勇気はなかった。
勘違いしているとはいえ、恥ずかしくて積極的になれなかった。
そして、渡辺は決心した。琴音へ自らの想いを手紙で書くことにした。
琴音ちゃんへ
琴音ちゃん、リサイタルの時は聴きにきてくれて、ありがとう。
今日は大事なことを書くからね。
読む前に大きく深呼吸をしてね。
琴音ちゃんは可愛いよ。
まるで、僕の妹みたいなんだ。
でも、僕が愛しているのはお姉ちゃんの水江さんなんだ。
琴音ちゃんの僕への気持ちはよくわかるよ。
だから、僕の気持ちを正直に書いたんだ。
琴音ちゃんも可愛いし、若いから必ず素敵な恋人が現れるよ。
僕もこのようなことを書いていいかとても悩んだけど、大事なことだし
琴音ちゃんに幸せになってほしいんだ。
ピアノは今からもぜひ習いに来てね。
川崎雄二
そして、手紙は琴音の元へ届いた。
琴音は愕然としていた。渡辺の本当の気持ちがわかったからだ。
でも、琴音は強かった。渡辺の誠実な手紙に怒りは感じなかった。
ただ、ただ、涙に溢れて止まらないかった。
今まで信じてきたわけだから
琴音は純粋だった。それでも渡辺への想いは捨てきれなかったのだ。
琴音も渡辺に手紙を書いた。
川崎先生へ
川崎先生、そうだったのですね
私がお姉ちゃんも先生にも辛い想いをさせたのですね
でも、琴音は先生のことがそれでも好きです
ピアノを一緒に弾けるだけでもうれしいです
また、教えてくださいね
琴音は頑張る子だから、きっと乗り越えてみせます
お姉ちゃんと幸せになってください
琴音
琴音ちゃん、ごめんね
先生は罪なことをしたね
でも、琴音ちゃんは僕の妹と同じだよ
琴音ちゃんは頑張る子だから
乗り越えられるよ
本当にごめんね
渡辺は琴音の手紙を見てそう思ったのだ。
しかし、琴音には何かが待ち受けていた。
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