星になりたい

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星になりたい

「琴音ちゃん、ほら、夜空を見上げてごらん」 「わあ、星がきれい」 「そうだろう。琴音ちゃんもきれいだよ」 「先生、可愛いんじゃなくて、きれいなのですか?」 「ああ」 「先生、恥ずかしいから帰ります」 なんだ、夢か、でも嬉しい。 やっぱり、先生好きよ 先生から、可愛いって言われて どれだけ嬉しかったか 先生、私はもう長く生きられないかもしれないの お母さんやお姉ちゃんは違うというけど なんとなくわかるのよ 私は小さい頃から感が良かったから 自分でもね、自分の体のことがわかるの 先生、会いたい 翌日 「琴音、今日は素敵なお見舞いの方よ」 「川崎先生?」 「そうよ。ほら」 「琴音ちゃん、ピアノを習いに来なかったから、心配してたよ」 「先生、ありがとうございます」 「事情は水江さんから聞いたよ。貧血で入院だってね。すぐよくなるよ」 「そうだといいのですけど……」 「どうしたの? 琴音ちゃん。元気がなくて、琴音ちゃんらしくないよ」 「そうですね。琴音は元気ですよ」 「よかった。その笑顔だよ」 「先生、お願いがあるの……」 「どうしたの?」 「先生とね、星空を見る夢を見たの」 「もう、夕方でしょ。もう少しここにいてくれたら嬉しいな」 「ああ、いいよ」 「そこの窓から、星空が見えるから、一緒にみたいの」 「そうだね、一緒に見よう」 「じゃあ、私は帰るね」 「お姉ちゃん、ごめんね」 「いいのよ……」 「どうしたの、お姉ちゃん、元気がなくて」 「ううん、気のせいよ」 「先生……」 「どうしたの?琴音ちゃん」 「私が星になったら寂しい? でも先生にはお姉ちゃんがいるから……」 「琴音ちゃん……」 「いいのよ。先生、私はわかっているから……」 「琴音は妹みたいな子でしょ?」 「琴音ちゃん……ほら、見てごらん、窓からきれいな星が見えるよ」 「わあ、本当。きれい」 「先生……」 「どうしたの……?」 「なんだか、涙がでちゃった」 「でも、先生、私は幸せよ。先生と出会えて幸せよ」 「お姉ちゃんと幸せになってね」 「私は星になって、見守ってあげる」 「琴音ちゃんはまだ、星になるのはずいぶん早いよ」 「ううん、わかるのよ」 「琴音ちゃん」 「琴音ちゃん、僕と約束をして」 「何の約束ですか?」 「病気をしっかり治してね……」 「そして、元気な笑顔を見せてね」 「うん、琴音は頑張る子だから、大丈夫よ……」 「ほら、先生、流れ星が」 「先生は気づかなかったな」 「やっぱり、先生、私は星になりたい」 「そうしたら、夜になったら、先生を見ることができるでしょ」 「琴音ちゃん……」 「どうして、先生、泣いているの……?」 「先生も頑張ってね」 「先生、先生、先生……」 「琴音ちゃん……」
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