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暗く静まり返る部屋。
──あれ? 拍手が聞こえない?──
「ハルナ? カナ?」
私は呼び掛けたが返事がない。暗闇に慣れない目が不安を煽り、呼び掛けても返事のない二人に焦る。
「どうしたの? まだサプライズは続いているの?」
しかし、静かな部屋は私の声しか聞こえない。物音しない部屋は黒く闇が広がっているだけだ。
「ねぇ、どうしたの? ハルナ? カナ?」
椅子から立ち上がり二人が座っていた方に手探りで進んでみた。しかし二人が座っていたであろう椅子には人の気配がしない。
「ねぇ、冗談はやめてよ。ねぇ……」
声が部屋に響くが二人がいる気配がない。
「そうだ! この部屋は何もなかったからまっすぐ歩けば壁にぶつかるはず。そこの引き戸があるはずだから……」
私は予測しながら引き戸の方に向かいおそるおそると歩いた。
「この辺りよね……」
壁に手がついた私はさらに手探りで引き戸を探す。
「あれ? ない? 多分この辺りのはずなんだけど」
壁に手を這わせ慎重にさぐってみたがそれらしきものが見つからない。暗闇の中でいくら手を動かしても引き戸らしきものに手が触れることはなかった。
「ねぇ、ハルナァァ──! カナァァ──!」
叫んだが返事はない。老婆も呼んでみたがもちろん返事はない。すると暗闇の中、また歩を進めようとすると何かを踏みつけた。スリッパを履いているがその感触は素足に伝わった。確かに何かを踏んだがそれは微かな動いていた。
嫌な予感がする。
──この感触は……?──
背筋に汗が伝わる。全身に鳥肌が立った。踏みたくないものを踏んだのだ。
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