黒い部屋

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「へぇ、なんかすごく古い建物ね……でもすごく懐かしい感じ」 「懐かしい?」  宿泊する民宿に着いた時、ハルナは懐かしむように呟いた。都会から出たことがあまりない私は少し怖い感じがした。 「あっ、おばあちゃんが住んでる家がね、こんな感じだったの。もう何十年も行ってないからさぁ……」 「そうなんだ」  興味なく私は返事をした。 「ごめんください」  古い引き戸を開けハルナは通る声で呼んでみた。建物の中は表の古い感じはなく綺麗にリノベーションしているのか古い建物感を残しつつ綺麗にしてあった。床や壁も色合いは(すす)で汚れたように黒く変色しているように見えたが、近くで指を這わせてみても汚れることもなく、あくまでもその様に見せているだけのペイントだった。少しライトを落とし薄暗くはしていたが、小綺麗にしているため快適な空間を演出していた。 「いらっしゃいませ」  年は六十過ぎぐらいか、少々腰が前方に曲がった老婆が奥から出てきた。今日は他に客もいないということで、ほぼ貸し切り状態とのことだった。  
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