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五日目・調査パート②
学校でも、昨晩の番組「都市伝説特集」について、もちきりだった。
ただ、ミキオが教えてくれた以上の情報を得られず。
下校まで時間がないというに、このままでは探索パート明確なテーマや最終目的地が分からないまま。
やっと五日目までこぎつけたのが、口裂け女とバトルすることもなく、ゲームオーバーなんて・・・。
焦りに焦って休み時間になったとたん席から立ちあがり、まだ接触していない人たちに、どんどん聞きこみをしていって。
隣のクラスまで出張するも、耳蛸な都市伝説特集のネタを長々と披露され「どうやって切り上げようかな」と考えていたら「そういえば」と横やりが。
「陰謀論といえば、篠原さんが、おかしなこと云ってなかったっけ」
俺のそばにいた四人がちらりと見たのは、窓際の机に座り、本を読んでいる女子。
彼女が篠原さんらしい。
一見、変哲ない一生徒に見えるとはいえ、隣の女子が囁くことには「あの子のお母さん、二年前に失踪したの」と。
「今も見つかっていなくて、かわいそうなんだけど、あの子のお母さんにはよからぬ噂があってさ。
失踪する、すこしまえから若い男といるのを何回か目撃されてて。
だから、カケオチしたんじゃないかって見られて、あまり騒ぎにならなかったみたい。
だって、お父さんは警察に失踪届けをださなかったというし、自分で探そうとしたり、まわりに捜索の協力を求めなかったからね。
もしかしたら置手紙とか、あったんじゃない?
カケオチの確信があって諦めたんだろうって云われているの」
「でも、あの子は現実を受けいれられなくて『カケオチなんて失礼だ!』って怒って、こう訴えたわけ。
海の向こうの隣の国に、お母さんが拉致されたんだって。
精神病の患者並の、ひどい被害妄想だから、だれも取りあわなかったし、警察も聞く耳をもたなかったみたいよ。
そうよね、拉致するなんて外国がそんなことするはずないのに・・・。
もし、ほんとうだったら警察や政府が動かないわけないし、新聞でもニュースで取り上げないわけないし。
まあ、お母さんの失踪がショックのあまり、篠原さん、心が錯乱して、現実と妄想の区別がつかなくなってんじゃない?」
「だから、わたしたちは同情的に見て、篠原さんが『あの国の仕業だ!』ってしつこく騒ぐのを、まっこうから否定しないで、まあまあって宥めていたんだけどね。
ほら、心ない人もいるから。
ある子が『外国が拉致したんじゃなくて、口裂け女に食べられたというほうが現実味があるんじゃないの?』って冷かしたの。
そしたら、あの子、鬼みたいな形相で怒鳴りつけてさ。
『そうやって、拉致の罪を口裂け女になすりつけたら、あの国の思惑どおりだ!』ってさ」
「都市伝説特集の陰謀論と似たようなことを訴えるの。
あの国の工作活動を、口裂け女とかの都市伝説の噂によって、霞ませているって。
拉致されて、まわりで人が消えていっても『口裂け女に食べられたせいだ』ってわたしたちが思うよう、しむけているんだってさ。
いやさあ、口裂け女の噂は、みんなしているけど、人が失踪しても大真面目に『食べられた』って考える人はいないでしょ。
いくら、怒りの矛先をどこにも向けられないからって、あの国に責任をなすりつけるなんて、とんだお門違いだし、あまりに阿呆らしいって。
もう、わたしたち、つきあいきれなくてさあ」
すべては心の病気になった篠原さんのデマカセだと。
そういう揺るぎない共通認識を持ち、彼女たちは笑いとばしているが、俺は口をつぐみ、笑いはしなかった。
彼女たちと同調できないのもしかたない。
この地域の暗部を見てしまったから。
二日目の目的地だった塾の実態は、あの国の工作機関の拠点だったから。
「外国がそんなことするはずがないのに」と断定できない証拠を、この目で見たわけだし。
そもそも、前世、未来からきた俺と、圧倒的に情報量が足りない状況下にある彼女たちとでは、どうしたって意識の温度差が生じる。
たしかに、警察や政府が腰をあげず、報道されていないのは引っかかるが。
二日目の、はからずも塾の正体を暴いた口裂け女もどきが、警察にいったっきり音沙汰がないのも、どう捉えていいやら・・・。
つい、あれこれ考えてしまうとはいえ、とにかく時間がないので、早速、窓際にいる篠原さんのもとへ。
「あの子は頭がおかしい!」と聞かされた、その直後に、接触をはかっては、まわりが怪訝がるだろうが、うじうじもじもじしている暇はない。
とはいえ、相手がまわりの目や耳を気にするかもしれないので「篠原さん、ちょっと話があるから、ついてきてくれない?」と。
思わせぶりな物言いに、しかも俺らが噂するのが聞こえたかもしれず、疑われるかと思いきや「わかった」と即答し、迷いなく立ちあがった。
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