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「とうっ!」後ろ足でコグマがジャンプする。きれいな弧を描き、コグマは見事に陸の頭に着地した。
「着地!」頭の上でしてやったりとコグマがケラケラ笑っている。
「なっ……! 部屋にいろって! 振り落とすぞ!」
「やーめーてー!」コグマの前足が陸の目を塞ぐ。わざとやっているのか。視界を塞がれては走れない。
「分かったよ! 連れてってやるから! その前足を何とかしろ!」
「えへへー、アニキ好き」
「はいはい。で、お前は何を食うんだ? クマなんだし、その辺の木の実か?」再び陸の視界が前足で塞がれた。ぎゅうぎゅうと上から押し付けられる。いくらぬいぐるみでも痛い。怒っているのか。だとしたら、どこに怒っているのかさっぱり分からない。
「あーもう、悪かったよ。木の実とか決めつけて悪かったよ! お前の好きなもん食っていいから」
もうどうにでもなれという陸の投げやりな態度とは裏腹に、コグマは陸の頭からいそいそと降り立ち、今度は左肩に体を乗せる。柔らかい体が陸の肩の上で「く」の字に折れる。
「コグマ、ドーナツ食べたい♡」語尾のハートマークがどことなく苛立たしかった。
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