12.結婚のご挨拶

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穂高さんのご両親への挨拶も無事に終わり、遅めのランチも済ませた私たちは、ホテルの高層階にある高級そうなジュエリーショップを訪れていた。穂高さんに「今日はまだ付き合ってもらうから」と言われ、大人しくついて来たわけなんだけど……。 ショーケースにはキラキラと輝く指輪がずらりと並んでいる。シンプルなものから宝石がこれでもかと散りばめられているものまで、上を見たらきりがない。 結婚指輪を買いたいと言われ、嬉しくてもう泣きそうになった。だけどお値段がどれも優しくなくて、尻込みしそうになる。それなのに、あれもこれも試着させられて、その素敵なデザインに胸のときめきが抑えられそうにない。 「あ、これ」 「Soleil(ソレイユ)って名前なんだね。気になる?」 「はい」 カットされた模様と埋め込まれたダイヤモンドが太陽のようにキラキラ輝く。ウェーブされたリングの柔らかさが温かみを増している。まさにソレイユ、太陽という意味そのもの。 「素敵……」 「気に入った?」 「はい。これがいいです。あ、でも、ソレイユで働くときは首から下げたいんですけど、いいですか?」 「もちろん。じゃあこのリングに合うチェーンも一緒に購入しようか」 「穂高さんのは?」 「もちろん買うよ。一緒に着けたいからね」 「あ、そうじゃなくて、穂高さんのは私が買うので。どのデザインがいいかなって」 「莉子、嬉しいけど、ここは俺に花を持たせて。デザインは莉子が選んだリングと対になるものにするよ」 柔らかく微笑まれて、胸がきゅんとなる。穂高さんはスマートにカードでお支払いを済ませてしまい、私は恐縮しながらも嬉しい気持ちの方が上回った。指輪が出来上がるのは一か月後。それでも、穂高さんと結婚したんだという実感がじわじわと湧きおこって、幸せでたまらない気持ちになった。そんな気持ちにさせてくれる穂高さんには感謝しかない。
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