13.ちゃんと、した。

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13.ちゃんと、した。

ドラッグストアの一角に、ずらりと並ぶオシャレな箱。穂高さんと手を繋いで、どれにする?なんて考えるフリをしながら、心の中は大騒ぎだ。 『ごめんね、莉子。最後までしたいけど、実は避妊具(ゴム)がなくてさ、今日は指だけで許して』 昨夜そう言われて、とろとろに蕩けさせられた体。最後までしたら一体どうなっちゃうんだろう。初めてじゃないのに初めてみたいな感覚に、もうとにかく心臓が止まりそうなくらいに緊張している。 しかもゴムはどれがいいのか聞かれたって、さっぱりわからない。違いとか、あるの? それにしても、二人でゴムを選ぶとか、一緒にお会計するとか、もうこれからしますよって店員さんに宣言してるみたいで、恥ずかしい。 「ほんと、莉子って想像力豊か。いちいちそんなこと気にしないって。需要があるからこんなにたくさんの種類が置かれてるんだろ」 穂高さんはくすくす笑いながら、「女性に優しい」とキャッチフレーズのついた花がらの可愛らしい箱を手に取る。一見それがゴムだとはわからないパッケージ。たぶん妄想に磨きがかかって頭が沸騰しそうな私を気遣ってそれを選んでくれたんだと思う。 「毎日どれだけの人がこれを買って使っているんだろうね? 愛する人がいるっていいよね」 そうニッコリ微笑んでくれる穂高さんが愛おしすぎて泣きそうになった。 私の初めては、言わずもがな雄一だった。すっごくすっごく恥ずかしくて緊張したけど、優しくはしてくれた。でもゴムは用意してくれなかった。そのあと私がネット通販でよくわからないまま購入して、それを使ってくれるようにはなったけど……。 比べるわけじゃないけれど、穂高さんが優しすぎていちいち思い出してしまう。
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