14.まどろみ

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穂高さんがお休みの日、穂高さんと一緒にアパートを訪れた。たまった郵便物を受け取り、部屋の中に入る。一週間以内に退去を命じられた雄一は、ちゃんと指示通り出ていったらしい。部屋には雄一のものはすっかりとなくなり、ガランとしていた。 その後彼がどこに行ったのかは知らない。どうなったのかも知らない。穂高さんはまだ彼らとの処理が残っているらしく、会うことがあるみたいだけれど、その話は一切しない。たぶん私に気を遣ってくれている。だから私も聞かない。私はもう前を向いているからだ。 もともと荷物が少なかった私の引っ越しは、案外あっさりと終わり、その後もたくさんの手続きをして、私はすっかり佐倉莉子から石井莉子になった。 セキュリティを心配した穂高さんに従って、マンションも変えた。穂高さんが住んでいたマンションでも全然問題はなかったけれど、私の身を心配した穂高さんは譲らなかった。私ももし何かあってまた穂高さんに迷惑をかけてしまったら申し訳ないので、甘えて引っ越すことにした。 ゆくゆくは……なんて言っていたのに、こんなに早く引っ越すだなんて思わなかったけど、思いのほか穂高さんはとても嬉しそうだ。 「せっかくだから大きなベッドも買おうか」 「一緒に寝るってことですか?」 「そうだよ。俺はいつも莉子にくっついていたい。だめ?」 コテッと首を傾げるその姿が妙に可愛らしくて胸がきゅんとなる。それにベッドの中での情事を思い出してムズムズっとして……。 「嬉しいです。私も穂高さんにくっついていたい」 ぴとっとくっつけば、手を握ってくれる。「莉子は本当に可愛いね」なんて耳もとで囁かれるので、急に体温が上がった。 いちいち甘い。 でもそれが嬉しい。
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