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面会時間ギリギリに病院へ駆け込むと、祖父はベッドから体を起こした状態で左手に点滴を打たれており、その傍らに祖母が座っていた。
「莉子ちゃん、来てくれてありがとうね」
「ううん、おじいちゃん大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってるだろう。わしはもうピンピンしとる」
声音は元気そうだけれど、思い切り大きな袋の点滴を刺されているのだから、ピンピンではないと思う。
「帰る帰るうるさくてねぇ」
「もー、おじいちゃん、おばあちゃんのこと困らせたらだめでしょ」
「まわりはみんな大げさなんだよ」
「口だけは達者なのよ。元気そうに見えるけど、おじいさん歩けなくなっちゃってねぇ。頭の血管切れたのよ」
「えっ、大事じゃないの!」
「だからしばらく入院なのよ」
祖母はやれやれといった様子でため息をつき、祖父は血管が切れたとは思えないほど元気に喋っている。安心はできないけれど、二人の元気そうな姿が見られてよかった。
「莉子ちゃん、忙しいのに来てくれてありがとうね」
「ううん、全然いいの。しばらく入院ならおばあちゃんもいろいろ大変でしょう。洗濯物とか着替えの取り替え、私やろうか?」
「そうねぇ。毎日じゃなくていいのよ。たまに助けてもらえると嬉しいわ」
「うん、わかった」
祖母と明日からの役割分担を話し合う。祖母は今日は病院に泊まるらしく、それならば私は祖父母の家には泊まらずアパートに戻ろう。
明日からは交代で祖父のお見舞いだ。交代とはいうものの、できる限り通って祖母の負担を減らしてあげたいと思う。雄一には負担をかけちゃうかもしれないけれど、少しだけ早く上がらせてもらおう。
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