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「ところで莉子、ソレイユは順調かい?」
「うん、頑張ってるよ。千景さんも働いてくれてる」
「まあ、ちーちゃんもまだ働いてるのねぇ。ありがたいわねぇ」
「本当にありがたい存在で……。ねえ、おじいちゃん。もし、ソレイユを改装したり売ったりしたいって言ったら、怒る?」
「怒るもんかい。ソレイユはもう莉子の店だ。好きにしたらいい。そこにわしの意見はいらんよ」
祖父はガハハと笑った。その屈託のない笑顔に、私はほうっと胸を撫で下ろす。ソレイユはもともと祖父の店だから、変化を求めてはいけないような気がしていたのだ。
「ソレイユを改装するのかい?」
「ううん。そういうわけじゃなくて……。もしも……うん、もしもの話だよ」
「ソレイユももう古いからねぇ」
祖母がしみじみと言う。祖母にとってもソレイユは長年祖父と一緒に働いた店なのだ。きっと思い入れが深いに違いない。
「莉子、ソレイユにこだわらなくていい。もう莉子は立派な経営者なんだから、莉子の好きな場所で好きなカフェをつくっていきなさい」
「おじいちゃん……。ありがとう、でも私、今のソレイユが好きなんだよね」
ソレイユを改装しようなんて気持ちはあまりない。ましてや売るなんてことももってのほか。だけど、雄一や桃香ちゃんの考えも間違ってはいないと思う。新しいことを取り入れるのも大事なことだものね。
祖父の言葉は胸に熱く渦巻く。
大事なソレイユを私に任せてくれたことに、改めて感謝の気持でいっぱいになった。
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