1.cafeソレイユ

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「莉子、あんまり客とイチャつくなよ」 「え?」 意味がわからなくて目をパチクリさせた。 私がいつ誰とイチャついていたというんだろう。わけがわからなくて困惑していると、桃香ちゃんがクスクスと笑う。 「しょうがないですよー。莉子さん愛想めちゃくちゃいいですもん。そう見えても仕方ないですよね?」 「……そんな風に見える? お客様に、今日も美味しいねって雄一に伝えてって言われただけなんだけど」 「そうか、ならいいんだ」 「雄一さんったら、莉子さんのこと好きすぎてヤキモチが過ぎますよぅ」 「だな」 二人がふふっと笑うので、私もニコッと笑ってみせた。けれど、心の内はモヤモヤだ。 イチャイチャだというなら、君たちのほうがイチャイチャしてるように見えるんですけど……。 って、これはヤキモチなのかしら? よくわからない気持ちを吹き飛ばすように、ブンブンと頭を振る。今は仕事中、集中しなくちゃ。 気を取り直して、桃香ちゃんへレジの使い方を教えつつ石井さんのお会計をする。 「ありがとうございました。またいらしてください」 桃香ちゃんはレジもそつなくこなし、可愛らしい笑顔で石井さんを見送った。もうそろそろ一人でレジを扱わせてもいいかもしれない。 カラランと扉が閉まって、店内が閑散とした。お客さんはいるけれどまばら。ふう、と一息つく。ランチタイムが終わると次はカフェタイムが始まるため、それに向けて準備だ。 「さっきの人、めちゃくちゃイケメンでしたよね!」 「え? 石井さんのこと?」 「莉子さん接客したんでしょう。いいなー。今度また来てくれたら声かけちゃおうかなぁ。でもああいうタイプの人って、笑顔の裏に何かありそうで怖いですよねぇ」 もうお二人の姿が見えなくなった扉を見つめながら、桃香ちゃんが冷たい視線を向けた。 人に対しての第一印象だとか、合う合わないとかはあっても仕方がないとおもうけれど、少なくとも私は石井さんをそんな風に見たことがない。 それに――。
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