3人が本棚に入れています
本棚に追加
美咲のお迎え当番の日は決して残業はできない。
そのため昼休みもほとんど取らずに息を吐く暇もないくらい夢中で働いて、終業時間が来るなり周り中に頭を下げてオフィスを飛び出す。
きっと陽平も同じか、それ以上に苦慮していることだろう。
子育て真っ最中、あるいはもう子どもも大きくなった働く母が多い職場なので、久美がもたもたしていると逆に「奥川さん、もういいから早く帰んなさい! お迎え間に合わないよ!」と声が掛かる。
本当にありがたく、感謝しかなかった。
文字通り綱渡りのような毎日。常に時間に追われ、精神的にも限界が近いくらい疲れ果てている。
それでも久美は保育園に着いて美咲の顔を見ると、それだけで疲れも半減する気がするのだ。
母も、ただ久美のために我慢して犠牲になっているなんて、本当に感じていなかったのかもしれない。
娘に気を遣って誤魔化したわけでも何でもなく。
──あなたにもわかるわ、すぐに。
母の『予言』通り、当時の母の想いがほんの少しずつでも実感できるようになって来た。
それは久美が母親として成長している証拠なのかもしれない。
~END~
最初のコメントを投稿しよう!