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俺と手ぬぐい
「あ?」
夜、洗濯物をボロいベランダに干そうとして、見慣れぬ手ぬぐいが、物干し竿に絡まっているのが見えた。俺のじゃない。何だこれ。何気なく、取ろうと手を伸ばしたら、手ぬぐいが腕に巻き付いて来た。
「うわ!何だ!?」
しゅるりと、首へ回ったなと思う間に、絞められていた。
「ぐえぇ……っ」
首絞められると、本当にこんな声出るんだなと思いながら、意識を手放した。
さわさわと、何かに頬を撫でられ、目を開ける。視界いっぱいの薄い海色、掠れた青海波文様。布。手ぬぐい。
「うわあっ!」
跳ね起きた。上半身は部屋に突っ込んでいたが、下半身はベランダで、体感温度が変な塩梅だ。俺は生きてるのか。この手ぬぐい何だ??混乱している俺の前で、縦に伸び上がった手ぬぐいが、しおしおとお辞儀するように折れている。しょんぼり、という擬音が頭に浮かぶ。
「……悪いと、思ってる、のか?」
頷くように、手ぬぐいは二度上下する。悪夢でも見てるのだろうか。
「もう首絞めないなら、いいよ」
言えば、パッと手ぬぐいが元気になった。手ぬぐいが元気って何だ。ひらひらと、手ぬぐいが楽しそうに俺の周りを飛ぶ。よく見ても、やっぱり布。顔なども無い。
「どうなってんだ?これ」
我ながら間抜けな声で、呟いた。
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