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手ぬぐいのほしいもの
青海波紋様の手ぬぐい・セイガイに首へ巻き付かれ、矢絣は射的の屋台の前で止まる。
夏祭りがあると知ったセイガイに、全力の身振り手振りでせがまれ、やって来たのだ。
「何だ。射的か?お前が出来るわけ……無いよな。俺がやるのか?」
矢絣の問いに、セイガイは頷くように身体を上下させる。
「仕方ねぇな……」
ため息をつき、矢絣は銃を受け取って気怠げに構える。やる気の無い姿勢とは裏腹に、狙った景品をきっちり当てて行く。セイガイは、びしりと一つの景品を示した。青海波紋様と矢絣紋様の入ったハンカチ。
「あれが欲しい、のか?」
矢絣が聞けば、セイガイはまた頷くように身体を上下させる。
「へいへい」
矢絣はそれも簡単に落とした。セイガイは嬉しそうな様子で矢絣に巻き付く。
「これが嬉しいとか本当に分からん」
矢絣が困惑していると、何かが台から飛んで来る気配がした。パッと、セイガイが矢絣の前に躍り出る。それは、セイガイに当たって弾かれた。へらりと落ちるセイガイを、矢絣が慌てて受け止める。
「おい、どうした?」
矢絣が弾かれた方を見ると、大きい針がある。赤く光りながら切っ先を矢絣たちに向け、また飛んで来ようとしていた。
「ったく……!」
矢絣は素早く銃を構え直し、そのまま撃つ。弾は針に直撃し、ぽとりと地に落ちる。矢絣が見た時、もう針は消えていた。
「何だ、ありゃ。セイガイ、大丈夫か?」
矢絣がセイガイに呼び掛けると、セイガイは頷くように身体を上下させ、矢絣の首元に収まる。
「ありがとうな」
矢絣が言うと、セイガイは嬉しそうな様子で、矢絣に頬ずりするように身を擦り付けた。
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