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危険な夜
玲子と海が店に入ってから、
二時間ほどが経過した。
夜の帳もおり、辺りは益々沢山の人々で
賑わっていた。
ガチャ……。
「ありがとうございました」
元気のいい店員の声と共に
ドアが開くと、市原、ルミ、護衛の男三人と
海が店から出て来た。
ピピ……。
「市原と横石、他四名が店から出てきました。
今なら、店の前には民間人はいません。
彼以外は……」東が如月へ連絡を入れた。
「了解、市原等、全員の身柄を確保せよ」
如月の合図に物陰に隠れていた捜査員が
飛び出すと一斉に彼等を取り囲んだ。
「市原、今夜こそはおまえを逮捕する、
大人しくしろ」
東が大声で叫んだ。
市原を援護するように、三人の男達は
懐からナイフを取り出すと、捜査員目掛けて
飛びかかり乱闘が始まった。
捜査員と男達の乱闘を目の当たりにした海は
あまりの凄さにその場に立ち尽くす……。
すると、市原が海の手を取り
「海君、逃げるぞ……」と彼の右手を引いた。
驚く海は市原に手を引かれ、
そのまま走り出そうとした時だった。
ルミこと玲子が海の左手を握りしめると、
自分の方へ引き寄せ
「こっちよ……」と海の耳元で囁いた。
無言で見つめ合う二人……。
そして、玲子がその場から走り出した……。
「待って……」
海も彼女の背中を追うように走り出した。
走り出した二人の背中を見つめた市原も、
捜査員の一人を蹴飛ばすと、
玲子と海とは真逆の方へ走り去った。
ピ……ピ。
「こちら、東。市原等と一緒にいた
男三名を公務執行妨害で緊急逮捕。
なお、市原は捜査員に危害を与え
その場から逃走。至急緊急配備を願います。
なお、横石は奴等と一緒にいた
山川海と一緒にその場から消えました。
引き続き彼女は捜査を続行すると
思われます」
「了解した。東、山川君が何故市原と
一緒だったんだ? ヤツとの関係は?」
「さぁ、俺にもわかりません。
今からそれを調べます。
でも、如月さん、案外横石が関係あるのかも
知れませんね」
「どういうことだ?」
「さぁ……なんとなくです。なんとなく。
男の勘っていうやつですよ」
と東が呟いた。
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