75人が本棚に入れています
本棚に追加
コインランドリーに着いた海。
「あ~、よかった。お客誰もいない」
ガラガラの店内にホッとした海は、
大型洗濯機のドアを開けると、大量の
洗濯物を投げ入れた。
チャリン、チャリン、チャリン……。
硬貨を投入口に入れると、洗濯物が
洗濯機の中で勢いよく回り始めた。
「これでよし!」
店内に設置してある椅子に腰かけると
海はスマホを取り出し画面のスクロールを始めた。
画面を見つめる海が何やら人の気配を感じ
顔を上げると、海の目の前に市原が立っていた。
「あ……」驚く海に、市原は優しい口調で
「やぁ、山川……海君だったね。
久しぶり。元気にしてたかな?」
と言った。
「え、ええ。まぁ……元気にしてますけど」
「君は、私を見て驚かないの?」
「驚いてますよ。だって……市原さんは
警察に追われてるんでしょ?
玲……、あのルミって女性と」
「そうなんだよね。参ったよ」
「日本にいたんですね。俺はてっきり国外に
いると思ってました」
「そうか? ははは。実は昨日、日本に
入国したんだよ。ルミと一緒に」
「そう……ですか。で、どうして俺の前に
現れたんですか?」
「いや……君に相談したいことがあってね」
「相談? 物騒なことはできませんから」
海が椅子から立ち上がると同時に、
市原が壁に手をドンと当て、
「なぁに、簡単なバイトだよ。簡単なね。
多分君にしかできないバイトだ」
市原は海の耳元で優しく囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!