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一方、コインランドリーで市原と遭遇した海。
ブブブブ……っと洗濯乾燥機の終了の合図が
聞こえた。
「乾燥……終わったみたいだよ」
市原が海に告げると、海は洗濯乾燥機のドアを
開き中からホカホカの洗濯物を取り出し始めた。
「市原さん、俺はその……
市原さんのお手伝いはできませんから。
悪に手を染めることなんて絶対にしない」
洗濯物を畳みながら海が呟いた。
「そう言うなよ。別に君に人を殺めたり
してほしいって言ってるわけじゃないんだよ。
それに、皆最初はそう言うんだよ。
悪いことはしたくないってね……」
「だから、俺は悪いことはしないんです。
俺に構わないでください。
第一、どうして、俺を誘うんですか?」
海が語気を強めた。
「どうしてだろうね? そうだな、強いて言えば
正義感が強く、物怖じしないところ。
ほら、私が悪者だってわかってても、
逃げ出したりしてないだろ?
そして、何より走れるってところかな」
「走る……? って……」
「まぁ、そういうことだ。
今日のところはこれで失礼するよ。
ルミとの待ち合わせがあるからね」
そう言うと市原はコインランドリー
の出入り口に向かって歩き出した。
「あ、あの、待ってください」
海が市原に声をかけた。
振り向いた市原に海は、
「飯……おごってください……」
と呟いた。
海の言葉に微笑んだ市原は、
「もちろん、食事は三人の方が
楽しいからね……十九時にここに来なさい」
と言うと市原は上着の内ポケットから
ペンとメモ用紙を取り出し、待ち合わせの場所を
記載すると海に渡した。
市原と海が会っていることを知るはずもない
玲子は、繁華街の中華料理店を目指して歩く。
繁華街を歩く玲子から距離をとり
東と数人の男性が彼女の後を追って歩いていた。
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