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繁華街の中にある中華料理店の
ドアを開けた玲子、店員に予約名の
『市原』と伝えると、店奥にある個室に
案内された。
部屋の中には、チンピラ風の三名の男が
市原の座っている椅子の後ろに立っていた。
「珍しいわね。繁華街で食事なんて」
玲子はそう言うと椅子に座った。
市原は両肘を円卓の上にのせ頬杖を突くと
「そうか? 中華料理は大人数で
食べた方が楽しいと思ってね」
市原は、顎をクイっと動かし、
男達に席に座るように促すと、
男達はゆっくりと市原の両隣に一名づつ、
そして、一名が玲子の隣に座った。
円卓に用意された席が一席空いていることに
気づいた玲子が市原に尋ねた。
「席が空いているようだけど、誰か他に?」
微笑んだ市原が、
「私の友人をルミに紹介したいと思ってね。
年下の友人……」と呟いた。
「年下の友人?」
玲子が不思議そうな表情を浮かべた。
ピッ……ガッ……。
中華料理店の周囲を囲むように立つ
数人の捜査員。
東のインカムのスイッチが入った。
「如月さん、横石が店の中に入りました。
中には、市原とその護衛を三名確認、
踏み込みますか?」
ピッ……。
「まだだ、民間人を巻き込む恐れがある。
奴等が店を出た後に一斉検挙だ」
インカムから聞こえてくる如月の声に
捜査員たちに緊張が走った。
「了解しました。
民間人を巻き込まないように……え?」
東の目が大きく見開いた。
「東? どうした?」
如月の声に応答した東……。
「如月さん……店の中に山川海が……
入って行きました」
と呟いた。
コンコンコン……。
個室のドアがノックされると、
店員がドアを開けた。
その瞬間、玲子の顔が一瞬険しくなり、
「市原……この子は?」と呟いた。
市原は、ゆっくりと立ち上がり
ドアの方向へ歩み寄ると、
「ルミ、紹介しよう……。
私の友人の山川海君だ」
と言うとドア付近に立つ海の肩を
抱き寄せ優しく微笑んだ。
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