玲子とルミ

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 玲子の前に突然現れた海に 動揺を見せないように平然を装う玲子。  市原は海を空いた席に座らせると、  「海君、彼女はルミ……覚えてるか?」  と彼女を紹介した。  「えっと……」言葉を濁す海。  「最初に君と出会った路地裏の店に 俺と一緒にいたんだけどね」  「そう……でしたね。思い出しました」  海は玲子の顔を見つめた。  頬杖をついた玲子は海から目を逸らした。  「ルミ……さん、山川……海です」  海が自分の名前を呟いた。  彼の声を聞いた玲子が市原の方を見ると、  「市原、この子をどうする気なの?」  と言うと市原は、  「なぁに、何もしないさ。  ただ、少しだけ手伝ってもらおうと 思ってね……」  「手伝うって何を……? まさか……」  「危険なことはさせないよ。  でもルミ、君も彼は適任だと思わないか?」  黙り込む玲子を見つめる海。  「あのう……市原さん、手伝うって 何をですか?」  「それは、まだ内緒だよ。  今日は楽しい食事会だ。  さぁ、料理が冷めなうちに食べようか」  市原が微笑んだ。  市原……一体なにを考えてるの?  『ルミ』こと玲子は心の中でそう呟いた。
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