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ハァ、ハァ、ハァ……。
玲子の背中を追いかけ夜の繁華街を走る海。
「玲子……さん、待って」
海の呼ぶ声に足を止めた玲子が、
ゆっくりと振り向いた。
荒い息を整えると、
「一緒に来て……」と呟いた。
無言で歩く玲子の後ろをついて歩く海。
しばらくすると、雑居ビルが見え玲子は
躊躇することなく中に入って行った。
エレベーターで地下に降り、
古びたドアを開けると、
「入って……」と海に声をかけた。
海が中に入ると、ベットとテーブルと椅子だけの
殺風景な光景が目に飛び込んで来た。
「ここは……?」海が玲子に聞いた。
「ここが、私が住む部屋」
「玲子さんの……住む部屋?」
女性の一人暮らしとは到底思えない部屋に
「何もないから驚いたでしょ?」
玲子が微笑んだ。
「玲子さん……その、聞きたいことが
沢山あるんだけど……」海が呟いた。
「そうね……私も聞きたいことがある」
そう言うと玲子は海を椅子に座らせた。
「どうして、市原と一緒にいたの?
彼に何か言われたの? 脅されたとか」
「部活の後、コインランドリーに
いたら市原さんがやって来て、
手伝ってくれないかって言われて……」
「何を?」
「わかんないよ……でも、俺にしかできないって
言ってた。それに……」
「それに?」
「走れるからって……」
「彼がそう言ったの? 他には?」
玲子の語気が少しだけ大きくなった。
「わかんないよ……」口をすぼめる海。
「驚ろかせたね、ごめん」謝る玲子。
「それより、玲子さんって警察官なんでしょ?
それなのに、どうして市原さんと一緒に
行動してるの?
危なくないの? 俺心配で……だから市原さんの
誘いにのったんだよ……」
海の言葉に小さい溜息をついた玲子は、
「それはね……」と言いかけた時
ガチャガチャと部屋のドアのカギ穴が開く
音がした。
海が椅子から立ち上がり、彼を守るように
玲子が立ちはだかった。
ガチャ……ドアノブが回り、ドアがゆっくりと
開いた。
「横石……相変わらず足速いよな」
ニヤッと笑った東が部屋の中に入って来た。
「ひ、東さん……どうして」
驚く海に東は玲子の顔を見ながら、
「もう、彼に全部話さないと
いけないんじゃね?」
と言った。
玲子も海の顔を見ると無言で頷いた。
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