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無断欠席
次の日の昼休み、教室でパンをかじりながら
大樹が海に近寄って来た。
「海~、なんかいいことあった?」
大樹の言葉に思わず箸が止まる海、
「え? なんで?」
少し戸惑いながら返事をする海に、ニヤっと
笑いながら、
「おまえにしては、今日なんかずっと
嬉しそうにニヤニヤしてるからさ……
な~んかいいことあったのかなって」
「そ、そうか? そんなことないけど」
「ふ~ん……ならいいんだけどさっ!」
「あ、俺、自動販売機に行かなきゃ」
海が慌てたように財布を手に持つと
教室から出て行った。
海の後ろ姿を見送る大樹のもとに、
加奈がやって来くると、
「海どうかしたの?
慌てて教室出て行ったけど」
「さぁ~、自販機で飲み物買うんだと」
「ふ~ん……」
そう言うと加奈は自席に戻って行った。
ガチャガチャ……ゴロン。
自販機の出し入れ口に手を差し込み、
ペットボトルを取り出した海、
「も~、大樹のやつ勘が鋭いよな……
俺そんなにニヤニヤしてたのかな……」
そう呟くと海はゆっくりとした足取りで
教室に戻って行った。
放課後……
「あれ? 海は?」
陸上部マネージャーの加奈が大樹に尋ねた。
「え? 知らね~よ」
「なんで知らないのよ! 親友なのに」
「はぁ~、知らないものは知らないの!
親友だからって何でもかんでも
知ってるわけね~だろ」
「もう! 高校生活最後の大会が迫ってるのに、
海のやつ何考えてるのかな」
「さぁ~ね……用事でもあるんじゃないの?
部活より大切な用事が……」
「なによそれ……明日、きつく言わなきゃね。
チームメイトや後輩に示しがつかない。
大樹からもちゃんと言ってよね……」
「へい、へい……まったく加奈は
海のことになると目くじら立てすぎ……」
「なんか言った?」
「いえ、なんでもありませ~ん。
トラック走始めま~す」
そう言うと、大樹はグラウンドに向かって
走り出した。
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