平和な大学生活

1/3
前へ
/126ページ
次へ

平和な大学生活

 「海~、昨夜はどこに行ってたんだ?」  大樹が心配そうに海の顔を覗き込んだ。  「え? コインランドリーに洗濯に」  「桃太郎の婆ちゃんみたいなこと言うな!  ラインしても既読スルー、電話しても 出ないし~。俺、超気になってさ、お陰で 睡眠不足だ!」と大樹が口を尖らせた。  「ごめん、ごめん。疲れてたのかな~? 洗濯済んで下宿帰ったらそのままバタン休~」  海がニコッと笑った。  「そうか、ならいいけど。俺、てっきり 俺に内緒でデートでもしてんじゃないかって 思ってさ! なんだ~そうか……」  笑顔の大樹が海の肩を人差し指でつついた。  「なんだよ~」海が身体をくねらせた。  ピピピ~。休憩終了の合図とともに 二人は首にかけたタオルを投げ捨てると トラックを走り出した。    「あ、いたいた……海~、大樹~」  トラックに面したスタンドから大手を 降りながら加奈が二人に向かって 大声で叫んだ。  加奈の大声に気づいた海と大樹は、 息を弾ませながら目を合わせると、  クスッと笑った。  トラックを走る海と大樹を見つめる加奈。  風薫る青空……、心地よい風を頬に受け 走り続ける海と大樹の横顔と、 全身から湧き出る雰囲気は清々しく 爽やかな学生そのものだった。      
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加