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平和な大学生活
「海~、昨夜はどこに行ってたんだ?」
大樹が心配そうに海の顔を覗き込んだ。
「え? コインランドリーに洗濯に」
「桃太郎の婆ちゃんみたいなこと言うな!
ラインしても既読スルー、電話しても
出ないし~。俺、超気になってさ、お陰で
睡眠不足だ!」と大樹が口を尖らせた。
「ごめん、ごめん。疲れてたのかな~?
洗濯済んで下宿帰ったらそのままバタン休~」
海がニコッと笑った。
「そうか、ならいいけど。俺、てっきり
俺に内緒でデートでもしてんじゃないかって
思ってさ! なんだ~そうか……」
笑顔の大樹が海の肩を人差し指でつついた。
「なんだよ~」海が身体をくねらせた。
ピピピ~。休憩終了の合図とともに
二人は首にかけたタオルを投げ捨てると
トラックを走り出した。
「あ、いたいた……海~、大樹~」
トラックに面したスタンドから大手を
降りながら加奈が二人に向かって
大声で叫んだ。
加奈の大声に気づいた海と大樹は、
息を弾ませながら目を合わせると、
クスッと笑った。
トラックを走る海と大樹を見つめる加奈。
風薫る青空……、心地よい風を頬に受け
走り続ける海と大樹の横顔と、
全身から湧き出る雰囲気は清々しく
爽やかな学生そのものだった。
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