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はぁ、はぁ、はぁ……。
通学路を走る海……。
自宅近くになると急に立ち止まり
息を整えると、ゆっくりと歩き出した。
玲子の家のガレージに目をやると、
車に乗り込もうとしている彼女を
見つけた海は、彼女のもとに歩み寄って行った。
近づいて来る海に気がついた玲子、
「あ、海くん、今帰り?」
「ああ、うん」
「部活は?」
「え~っと、休み……今日は練習休みなんだ」
「ふ~ん、そうか」
「玲子さん、出掛けるの?」
「うん、せっかくだしその辺をドライブがてら」
「ふ~ん……」
海がそう呟いた。
「一緒に行く?」
玲子が海に聞くと、少し驚いた海が次の瞬間、
恥ずかしそうに、
「いいの?」と彼女に尋ねた。
「ふふふ、いいよ。そのかわりおばさんに
ちゃんと言ってきて」
「わかった。ちょっと待ってて」
玲子にそう告げると、海は急いで自宅へ
走り出し玄関のドアを開けると
息を切らしながら、
「母さん、俺、出掛けて来る」
と大声でリビングに向かって声を発した。
彼の声に気づいた母親がリビングから
出て来ると、
「あら? 部活は? 何処に行くの?」
と海に尋ねると、息を整えた海が
「部活は、ない! 玲子さんの買い物に
つきあってくる。荷物持ち……これ、お願い」
そう言うと、玄関にリュックサックを
ポンと投げると制服姿のまま玄関を
駆け出して行った。
エンジンがかかった車の助手席に
乗り込んだ海はシートベルトを締めると、
「おまたせ……」
と運転席に座る玲子に向かって微笑んだ。
海の顔を見た玲子も優しく頷くと、
「じゃあ、行こうか」
と車を発進させた。
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