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それを聞いた母さんは泣き崩れてしまった。
「私だって…私だって辛かった…寂しかったわよ…!それでも1人で何とか蒼を育てながら頑張って…なのにあの人ったらずーっと海外!海外なんて…海外なんて………何が起こるか分からないのに…」
「ずっと心配されていたんですよね…旦那様のこと」
そうだったのか。僕はずっと母からは父の愚痴しか聞いたことがなかったからかあまりピンとこなかった。
「それで…懐中時計はどこへ仕舞われたんですか?」
「…あれを付けて楽しそうに海外のことを勉強する蒼を見てると…不安になって…。またこの子もあの人のようになってしまうんじゃないかって。」
「母さん…確かに僕はお父さんが話してた旅の話とか、多分すごい好きだったしそれで興味を持って大学を選んだ。でもね、僕は海外へ行って仕事がしたい訳じゃないんだ。ただ海外の文化とか言語とか…そういうのに興味があるってだけで。」
「そう…だったのね…私てっきり…」
「大丈夫だよ。母さんが心配するような所には行かないからさ。だから…懐中時計の場所、教えてくれないかな」
懐中時計は母の部屋の、鍵のついた小さな箱の中に仕舞われていた。
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