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大手インテリア会社であるクローバーデザインに入社して五年。私、有川恋は恋に仕事に邁進する日々を送っていた。
時刻は二十一時。
ノー残業デーに指定されている金曜ということもあって既婚者の多いうちの課は私ともう一人以外はすでに退社している。
(やっぱ……ダークブラウンよりチョコレートブラウンかな……)
私は来週、得意先に提出するイタリアンレストランの改修工事についての見積書と悪戦苦闘していた。
今度、改修工事するイタリアンレストランは創業三十年の老舗でレンガ造りの建物で外でも食事が楽しめるよう小さな庭がついているのだが、老朽化が進んでいるため全面的に建て替え、庭も内装も一新したいというのが先方からの要望だ。
「今のあったかいイメージそのままに流行りの要素もいれたいなぁ……」
私は独り言をいながら、自社のカラーサンプルと納品予定のテーブルとチェアを見比べる。
「恋先輩、まだ帰らないんですか~」
鼻にかかった高い声が隣から聞こえてきて私は眉間に皺を寄せそうになった。
「未希ちゃん、さっき話した見積書は部長に提出してくれた?」
「しましたよ~、もうばっちりです~」
近藤未希は今年で入社二年目の二十四歳でこのクローバーデザインにはコネ入社している。
なんでも未希の父親が中規模の会社を経営してるとかでうちの人事に顔が利く上、常務とも仲がいいとか。全部未希が勝手にしゃべっていたことなので鵜呑みにはしていないが、まるっきりの嘘でもないと私は感じている。
「未希ちゃんはもうあがっていいよ、私はもう少しやってから帰るから」
「え~、私がさき帰ったらまた私のせいで恋先輩に迷惑かけて残業させてるみたいで心苦しいです~このままじゃ恋先輩の来期の評価下がっちゃうんじゃないかって夜も眠れないんですぅ」
(そのしゃべり方からすでに迷惑だけど……)
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