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テレビでも大きな音楽番組に呼ばれたのをきっかけに、彩羽はさらに飛躍し、ソロでありながら大きな会場でライブもやらせて貰うようになった。
それから数年。
世間でも彩羽は一躍有名となり、知らない人はいない存在になった。
気恥ずかしさもあるが、支えてくれる周囲の人や、彼女のおかげで、空は今日も頑張れた。
いつかはこんな舞台で歌えたら。
幼い頃に、夢のように思っていた場所に、空は立っていた。
期待と胸に高まるファンの歓声と緊張が、こちらにまで伝わって来るようだった。
流れる音楽と共に彩羽が現れた瞬間、多くの歓声を浴びる。
ファンの興奮がここまで伝わってくる。
ああ、ここまでやってきて良かった。
辞めないで良かった。と空は思う。
前ならビビって、人前でこんな風には歌えなかった。
勇気を貰ったおかげだ。
空は彩羽として胸を張って、堂々と歌う。
周囲を見回すと、遠くだが、彼女の姿ももちろんある。
彼女は大切な存在であると同時に、いつだって彩羽の熱心なファンなのだ。
特別席で見ることも出来るのに、自分でいつも席のチケットを手に入れてくる。
ファンの鏡と言っても良いかもしれない。
天使の歌声はもう出せないが、それでも今の彩羽も好きだと言ってくれるファン達のおかげで、空はここにいる。
大勢のファンの為に、この彩羽の歌を求めてくれる人の為に、空は今日も歌うのだった。
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