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空は放課後、帰宅しようとした時、鞄から何かが落ちる。
それは彩羽のキーホルダーだった。
新作が出来たと事務所から送られてきたものだ。
空が拾おうとしたが、それよりも先に拾いあげる者がいた。
「睦実、なんか落ちたわよ。って、あれ…?これ…!彩羽くんのキーホルダー!?」
キーホルダーを拾ったのは、クラスでも一番彩羽の推し活に熱心な、深水愛良だった。
はっきり言って空は愛良が苦手だった。
愛良は気が強く、クラスの中心的存在であり、陰キャな空とは正反対だと思っているから。
「え…っ?ああ、うん…。」
躊躇いがちに空が頷いた瞬間、愛良は目を輝かせた。
「睦実、あんた彩羽くんのファンだったの!?好きだったんなら言いなさいよ~!どうして今まで黙ってたのっ?」
声を大きくして、まくし立てて来る。
これだから苦手だったのだ。圧が強い。
「…別に言う必要ないと思ったから。」
「とにかく、意外ね。まさか睦実が彩羽くんを好きだったなんて。あ、これ返すわね。」
「ありがとう。」
渡される彩羽のキーホルダー。
愛良はそれを不思議そうに見た。
「彩羽くんのグッズは私も全部持ってるけど、見たことない奴ね。
確か、出たばかりの奴よね?新作のを持ってるなんて、結構なファンだったのね。」
愛良はかなりコアなファンらしい。これは警戒した方が良いかもしれない。
「あ、ああ…貰ったんだ。友達が見かけたからって。」
「ふーん…なんでも良いけど。
あ、私そろそろ行かないと。じゃあね、睦実。」
「じゃあね…?」
ぶんぶんと手を振ってくる愛良に、空は戸惑いがちに小さく手を振っていた。
今まで愛良は空の事など、視界にも入ってなさそうな様子だったのに、彩羽が好きだと認識した瞬間に、気さくに去っていった。
苦手だとも思うが、意外と思っていたほど、愛良は悪い奴ではないかもしれないと、空は思った。
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